リサーチ・サマリー

3Dブランディング
〜ブランディングされた空間が伝えるメッセージ〜 |
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牧場の牛はどれも同じように見えるので、農場経営者は、まもなく牛に烙印を押して競合相手の商品と永遠に区別することを学びました。
今日、多くの製品はどれも似通って見えます。そして、経験豊富なマーケターは今でもブランドを利用しています。しかし、最終的な目標は、他の製品との違いを明白に区別する印象を消費者の心に焼き付けることにあるのです。
広義にはブランドは第一に所有権を証明する役目を果たしましたが、市場におけるブランディングにはもっと多くの役目があるのです。
成功したブランドとは、不文の保証、完全なものの印、本質的価値を約束するものであり、該当商品やそのメーカーに好意的な評判を授けるものなのです。
ブランドの成功は、いかに消費者の意識下にどれだけの目に見えない資産価値を植えつけることができたか、ということだけで判断されるわけではありません。ブランディングの最終的なゴール、究極の目的は、他に選択の余地がないということを認知させ、その製品やサービスの購買意欲をそそるという、非常に明白なものなのです。
“ブランディングとは、顧客に競合相手よりあなたをどうやって選ばせるか、ということではありません”と、ブランディングのグルー、ロブ・フランケルは言います。“それは、顧客の問題解決には、あなたしか選択の余地がないと思わせることなのです”
コカ・コーラの例を見てみましょう。もし、のどの渇きが問題であれば、世界中のソフトドリンク愛好家達にとっては、しばしばコーラが唯一の選択とみなされているわけです。このことは、成功したブランディングに関する議論において、常に、単なる飲料でなく文化的現象として「TheRealThing」(本物) が語られる理由なのです。
このように見てみましょう。もしコカコーラ社が全従業員を解雇し、不動産を売却し、ボトラーとの契約を破棄したとしても、ブランドとしての資産価値は残るでしょう。コカコーラ社の固定資産価値は70億ドルとも言われていますが、そのブランド価値だけでも軽くその10倍はあるでしょう。

1)ブランディング:概略

さて、それでは企業がその製品やサービス、もしくは会社それ自体をブランド化するにはどのように取り組んだらよいのでしょう。広告会社は顧客に対して、勝ち組のブランドの成功の基は、巧妙な標語や、記憶に残るロゴ、そして多分適切なメディア戦略があると信じ込ませます。確かにこれらのマーケティングツールは、ブランドのアイデンティティーを強化する役目は果たすでしょうが、しかしそれはすべてではありません。
“ブランドとは認識の集合体としてみることがもっとも適切でしょう”アリゾナ州スコッツデールのブランド構築会社、SHRパーセプチュアルマネジメント社のバリー・シェパード社長は言っています。“そして重要な目標は、顧客との全ての接点に於いてその認識を浸透させることなのです”
このことは、単にブランドを宣伝するのではなく、ブランドを生きるということです。
ブランド構築を組織全体にわたって組み立て、ビジネス戦略、製品デザイン、顧客サービス、ひいてはオフィス環境にまで具体化することです。
オフィス環境のブランディングという概念は、実験的考えに聞こえるかもしれませんが、少なくとも小さな規模ではすでに何年も実際に行われてきています。法律事務所が銀行と、銀行は広告会社と、広告会社はハイテク会社とは見た目が違うのはそのせいです。
しかし、現在建築家やデザイナーはさらに深く掘り下げて、法律事務所が、銀行が、また広告会社が、他のすべてとどう違うのかをいかに示すことができるか探索しています。
“全ての建築プロジェクトは、ブランドをコミュニケートするという意図を持って始められるべきだ”とセントルイスのキク・オバタ&カンパニーのデザイナー、オバタ・キクは主張しています。“空間を構成する全ての要素、建物・内装・照明・グラフィックス・景色、は直感的なブランド体験というものを生み出すために統合されなくてはならない。これは、後からの思いつきで会社のロゴをあてがうといったことでなく、三次元のブランディングを行うということなのだ”

2)3Dブランディングの実例

多くの企業にとって3Dブランディングは完璧に意味のあることです。それはなぜか?
ビジネスを行うために使用される物理的空間は、それが店舗であれ、支店であれまたは本社であってもブランド構築の公式から抜け落ちるには、あまりにも目に付きすぎ、高価な資産なのです。
結果的に、もしブランドがメッセージであるとするならば、空間はそれをわからせる手段なのです。たとえていえば、巨大なビルボードであり、もしくは製品のパッケージングの大掛かりな延長線のようなものかもしれません。結局、企業の物理的環境を決定するもの、規模・形・素材・色、はその製品のパッケージングを決定するものと多く共通するのです。
では、なぜブランドのコミュニケーティングにこれらがともに役割を果たさないのでしょうか。
実は、空間は避けがたい役割を果たしているのです。企業の物理的環境は、意図的であるかないかに拘らずメッセージを伝えています。ただひとつの問題点は、そのメッセージが綿密に練られ、ブランドアイデンティティーを強化するものなのか、ないがしろにされて弱めるものなのか、ということです。
このことを、違った面から見てみましょう。他のブランディングの成果により、訪問者はある種の期待を持って正面玄関にやって来ます。彼らが実際に内部で目にし、経験することは、事前の期待を裏付けるか、期待に反するのかのどちらかです。もし、企業がわが社は効率的であると言ったとしたら、当然そのオフィスもそうでなくてはならないでしょう。もし革新的であることを誇るのであれば、時代遅れのテクノロジーに頼っていてはならないはずです。そして、手ごろな価格を提供する企業として見られたいのであれば、高価な絵画類は最小限にとどめるべきでしょう。
さらには、空間は目に見えるとても大きな媒体であり、そのブランド構築に果たす役割は脇役でなくまさに主役なのです。企業は、そのブランドに関していくらでも語ったり、書いたりすることはできますが、どんなに言葉を尽くしても、オフィスや店舗を実際にひと目みて受けた印象を変えることはできません。
ある点で、3Dブランディングは、“プレース”の持つパワーを理解していく進化のプロセスにおける、次なる論理的段階を表しているのです。昔、事実上すべての企業は、ファシリティーが仕事の流れと生産性に影響を与える大きな力と考えていました。近年になると、ファシリティーが従業員の雇用と確保に与える影響というものが、広く受け入れられるようになりました。そして現在、企業はそのファシリティーが企業文化を明確に定め、ブランドアイデンティティーを高めるものとして、さらに多くの期待を寄せているのです。

3)企業組織のイメージとブランドアイデンティティー

企業環境のブランディングは、その企業のビジネスそのものの綿密な調査と、それをどのように位置づけるかということから始まります。それゆえ、ファシリティーの専門家に、企業の機能的要求に関する意見を求めるだけでは十分とは言えません。マーケティングの担当者も早い時期からプロジェクトチームに参加し、どのようなメッセージをいかに、そして誰に対して発信すべきかを明確にする手助けをする必要があります。
この、“誰に”という部分のプロセスは広範囲にわたります。3Dブランディングは多数の聴衆に対して語りかける可能性を持っています。それは、社員であり、顧客、ベンダー、株主、競合他社、そして社会でもあります。伝えようとする特質については、さらにもっと長いリストになります。トレンディー、クラッシック、若々しい、革新的、効率的、手ごろなどなどブランドのメッセージが何であれ、クリエイティブな企業はかれらの環境を通じてそれを伝達する方法を見出すのです。
企業の物理的な空間が、いかにブランディング活動を高めるのか調査するためには、製品のブランドとコーポレートブランドをはっきりと区別することが重要です。洗剤、朝食シリアル、ビールなど多くの消費財は、それら固有の特質を持った、明快なブランドアイデンティティーを誇っています。製品の裏側の企業は見えてこないのです。
しばしばサービス関連会社や、自動車会社など大物の製造会社などの企業に関しては、企業組織としてのイメージはアイデンティティーの核として絶対必要です。疑いなく、これらのイメージは製品に対して信頼性を与えるものですが、しかしその製品とは別の生き物なのです。結局のところ、イメージはふつう特定の製品ラインより耐久性があるものであり、それに関するどの特質も、競合相手にとっては製品そのものに対してよりも、戦いにくいものなのです。
いくつかの一般的な企業としてのイメージを見てみると、それが企業の持つ物理的空間にいかに反映され、またその結果ブランドアイデンティティーを強化しているかが明らかです。

4)社会・コミュニティー オリエンテーション

組織が、よき市民である、という評判の育成に努めるためには、そのファシリティーを通していくつもの方法があります。塀をつくらない、専用駐車場を設けない、はっきりとわかる正面玄関、そして魅力的に作られた裏口(しばしばお隣さんに面しています)などは、企業が自分をよき隣人と見せるためのいくつかの方法です。
同様に、自然な造園、気にならない程度の排気や騒音、そしてゴミのポイ捨てに対する断固たる態度、などは、エコフレンドリーと見られることを願う企業にとって最優先の課題です。

5)品 質

品質、という言葉はあまりにも使われすぎてしまい、ブランディングの特質としてはほとんど意味のないものになってしまいました。問題は、もちろん企業が“品質に対する責任”というとき、だれしもうつろな目つきになり、聞いてなんかいいないということです。
一つの解決法:品質について語るのはやめにして、見せることをはじめなさい。
視覚的な手がかりは、言葉に比べてより多く信じられるものです。目立つ建築や印象的なオフイスデザインよりもどうしたら“私たちはよい製品を作っています”とはっきり見せることができるのでしょうか?
テキサス州プラノにある、情報技術の大手、EDS社はEDSエクスペリエンスというファシリティーにより同社のビジネスの世界的広がりや、技術的能力を3Dでデモンストレーションし、その品質の視覚的な実証を行っています。その建物では、訪問者に対し各種の展示を行っていますが、しかしその中心となっているのは、管制センターと呼ぶべき部屋で、技術者たちが多くのEDSシステムをモニターしているのです。口には出さなくても、その顧客に対するメッセージは明らかです:私たちにはあなたのビジネスをサポートするインフラと専門的知識があります。

6)革 新

テクノロジー関連の企業にとっては特に重要ですが、革新はほとんど全ての組織にとって連想されたい特質です。事業の速度が早くなればなるほど、時代に取り残されているとみなされる危険性は高まるのです。
Muzak社の例を考えてみましょう。かつては、エレベーターや食料品店向けのBGMを提供する全く退屈な会社とみなされていました。このイメージから脱却するため、Muzak社は大々的なブランドの再構築作業に着手し、売り上げの倍増と顧客リストの増加という再生を起こさせたのです。
会社がサウスカロライナ州フォートミルに移転したとき、その新たなブランドイメージは現れました。まず、駐車場での音楽からその経験は始まります。社員と訪問者は、次に入口を通り抜けると、わずか数歩で郊外の工業団地から都会的なシティーセンターへと運ばれるのです。
橋や通り、それに天窓を組み合わせた“Muzak City”(実際は改装した倉庫です)には独立した建物の劇場、カフェ、郵便局、会議室それにオフィスがあります。さらに、街の中央には4000平米のステンレスでできたまるでCDのような広場まであるのです。
1865年創業の子供服メーカー、Carterユs社も、そのブランドを再構築するとき、古風なイメージから脱却する必要がありました。全社的な運動は、アトランタの新本社にまでおよびました。そこは、会社のブランド再構築計画における他の要素に共鳴する、視覚的なエネルギーを発するように作られていました。これが達成された理由の一部には、子供時代のマジックを捉えた遊び心の要素、つまり、伝統的な木の家や黄色いレンガ道で結ばれた4つの違った特徴を持ったデザインの村々などを建ててしまったことが上げられます。

7)顧客に対する関心

多くの組織は、顧客最優先こそが核たるバリューであると主張しています。問題となるのは、このメッセージをファシリティー デザインに於いていかに伝達するかです。
ゼネラル・モータース社の採用したひとつの取り組み方法は、顧客の面倒をみている人達からはじめに面倒みましょう、ということでした。
コールセンター、と聞いて多くの人は低賃金の作業場を思うでしょう。しかし、GM社のテキサス州オースティンにあるカスタマー・リレーションシップ・センターは大違いです。
会社の見解?もし自社の社員に、すぐれたカスタマーサービスを提供するよう求めるのならば、彼らにたいしてすぐれた環境を与えなくてはならないということです。
GM社のコールセンターは、社員同士のコミュニケーションが取りやすいような、オープンレイアウトを採用しており、顧客からの質問に対して即答ができる体制となっています。

8)存在と成功

ブランドの背後にある会社が見えるということは、その規模や資産、能力のイメージを
作り出すことにより、特にハイテク企業のように長い歴史を持たない企業にとって顧客を安心させるのに特に重要です。
最初の廉価仲買業社のひとつであるDatek社が、ジャージーシティーの海岸地区のオフィスビルに業務を統合したとき、会社は、ハドソン川の対岸のウオールストリーター達からはっきりと見えるようにしました。デザイナー達は特製の日除けを取り付けて、昼間は真っ黒の空間にしか見えない窓が、夜になると中からの照明のおかげで絶対見逃さない標識となるようにしたのです。
室内のカーペットにはDatek社のロゴと共に、繊細な回路ボードのパターンが描かれ、一方ガラスや鋼鉄、ゴムそしてアルミニウムといった材質が、すみずみまで会社のコーポレート色にコーディネートされているのです。

9)コラボレーション

ある組織においては、その文化を、協調のコンセプトとしてとらえています。“私たちは皆一緒”という意識を育成し、それが、個々を足していった全体よりも会社をより大きなものとするという考えです。
Sara Lee Intimate Apparel社の例がまさにそれでしょう。このコングロマリットが、2つの競合ブランドをマンハッタンのファッション地区の同じ階に同居させたときのことです。CEOのファシリティー デザイナーに対する命令は、社員同士が競争相手であるという意識を失わないようにしながら互いにアイデアを共有することを助長させるような方法を見つけることでした。
デザイナー達は、広く開放的なフロアプランを作り、双方のブランドの人員を同時に混在させたのです。アパレルデザイナー同士、パターングレーダー同士などなど、という様に。
ある程度のプライバシーを必要とする人達には、背の高い構造的なシステムでスライドドアのついたものを。そうでない人達は、軽くてほとんど空気のような感じのするワークステーションでとなり近所の人が何をしているのか簡単にわかるものを。新しいオフィススペースは、個室と曲がりくねった廊下ばかりだった以前のオフィスとははっきりと違うもので、それぞれのブランドの社員たちに、古い仕事の進め方は、引越しとともに終わったことを思い出させたのです。

10)経験を販売する

現在まで、企業環境においてブランド確立のために認められてきたほとんどのことは主に
視覚的に訴えるものに関連してきました。しかし、次の開拓史には人々が見るものだけでなく、経験するものまで拡大していくであろうということを示す証拠がいくつか出てきています。
経験は常に娯楽ビジネス(ウオルトディズニーを想像してください)のもっとも大事な部分でしたが、いまや、商品やサービスだけでなく娯楽経験を売るというアイデアは、劇場や遊園地からかけ離れたビジネスの中にも現れてきています。
ハードロックカフェやレインフォレストカフェのようなテーマレストランでは食べ物は単にイーターテインメントの小道具の一つです。すべてのものが一緒になって、客の感覚を捉えて個性的な印象を残すような、統合されたテーマを作り上げるようにできており、物理的に経験を思い起こさせる為に売られている記念品でさえその一つなのです。
一方、ナイキタウンやREIは“ショッパーテインメント”と銘打った双方向の体験を売り物にして顧客をひきつけています。ナイキのシカゴにある旗艦店は人目を引くディスプレー、エネルギッシュな音楽、大きなビデオスクリーン、ハーフコートのバスケットボールフロアなどすべてナイキと叫んでいるようなものが満載で、ナイキのブランドアイデンティティーの核とみなされています。ナイキのプレスリリースによるとその店舗は“お客様が観客として製作に参加している劇場として”建てられたのです。
同様に、REIとして良く知られているリクリエイショナルイクイップメントインクはそのホームタウンであるシアトルの店舗で同じような方法をとったのですが、そこではアドベンチャースポーツの愛好家たちが買う前にそれを試すことができるのです。建築家たちは65フィートものクライミングロックやマウンテンバイクのコース、レインルーム、その他の実際にテストすることのできる場所を備えて、すぐにシアトルで有数の観光客のアトラクションの一つになった娯楽体験の場を作り上げたのです。
それでも、経験とは単に娯楽のみとは限りません。企業は顧客と個人的に、記憶に残るような方法で出会うときにはいつでも一つの経験をプロデュースすることができます。ですから、“経験経済”は必ずしも消費産業にだけ当てはまるのではないということも導き出されます。経験をブランド確立の為のツールとして利用するという動きはレストランや小売店で始まりましたがB
to Bの状況の場合も考えられるはずです。
銀行や、保険会社、製造業者などの企業は顧客が彼らの職場を熱心に訪問したがり、入場料を払うことさえ厭わないという日が来れば経験経済に無事に到達したということを知るでしょう。そしてもしも同じ顧客たちにその訪問が終わる前に記念になるようなTシャツやコーヒーマグを販売すれば、もう元には戻れないのがわかるでしょう。
そのときにやっと古い殻を破ろうとする企業はその物理的環境を単なる仕事の場として出なく、メッセージを発信する場であると捉えることによって大きな前進の一歩を踏み出すことができます。
確かに、これまでブランド構築に成功してきた企業より多くの企業が他を圧倒するような独自性を持ったブランドを欲しています。ブランディングを3Dの視点で、ワークプレースも含めたビジネス戦略のすべての要素を視野に入れて考えるとき、これらの多くの企業の願いがかなうかも知れません。
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